高次脳機能障害の運転再開|発症3年後の様子

私がインフルエンザ脳症になったのは2019年1月です。今日は2022年3月下旬です。

 

高次脳機能障害になったため運転の資格は停止となっていました。が、千葉リハでのリハビリ、心理検査、実技試験を経て、正式に運転可能のお墨付きをいただき、今では楽しく運転を再開しています。

 

ドライブが趣味の私にとって、「運転禁止」の命令はとても苦しいものでした。だから必死に運転再開を目指して頑張り続けました。頑張るなと言われましたが、頑張り続けてしまいました。止められません。

 

発症から3年以上が過ぎました。今はコロナの影響で遠出をしていませんが、状況が変わったら、絶対に千葉から宮城の実家まで自分の運転で寄生したいと考えています。そこが私のゴールです。ここまで達成できたら悔いはありません。

 

どうやって高次脳機能障害になって3年後に普通に運転できるようになったのか?

高次脳機能障害は同じ症状がありません。周辺環境、性格、経験、能力…これらが全く同じ人がいないのと同じです。それを念頭に置いて、私がどのようにして病気をする前と同じように運転ができるようになったのかを振り返ってみます。

 

どの様な障害だった?

記憶障害、注意障害、それゆえの遂行機能障害です。

 

新しい事が覚えられなくなる障害です。それゆえに注意すべきものを忘れてしまう。だから遂行機能障害という結果になります。

 

記憶障害があると目的地を忘れます。ちなみに交通ルールは忘れません。なぜなら古い記憶だからです。私が覚えられないのは新しい記憶なんですよね。

 

注意障害は

  • 記憶障害ゆえに注意すべきものを忘れてしまうから注意障害。
  • 易疲労で疲れ果ててしまい、注意散漫になってしまう。
  • 一点に集中し過ぎてしまい、周囲への配慮が無くなってしまう。

この3つです。注意障害は運転再開を判断する際の大事な要素です。

その障害は今ではどうなった?

私が一番恐れていたのは「目的地を忘れてしまう。その結果、取り乱してしまい、注意力が極端に低下する。」というものです。

 

最悪、運転中に運転していることを忘れてしまう。という事態になりかねません。これでは運転は絶対に無理!

 

感情失禁があるとさらに事態は悪化します。「目的地を忘れて、取り乱して、怒り狂う!」なんて事になった日には…絶対に運転の許可はおりません。

 

私自身にはそのような傾向はありませんでした。感情失禁がでやすかったのは「仕事と子供」の2点に限定されていました。

 

運転では感情失禁がまったくおこりません。障害になる前と全く同じで平静を保っていられるんですよね。

 

疲れは厳しかったですね。運転再開直後は数百メートルを運転しただけでグッタリしましたから。神経疲労がとても酷かったです。千葉リハから心配されていたのはこちらでした。

 

でも毎日少しずつコツコツ運転をし続けた結果、今ではいくら運転しても疲れる気がしません。

 

「コロナが流行していなかったら、とっくに500Kmの道のりを走破して帰省していただろうなぁ。」

 

なんて考えています。そのくらい回復しています。

 

障害は運転にどのように影響する?

高次脳機能障害で一番ポピュラーなのが「易疲労」だと思います。脳が疲れやすいのです。私にとってはこの易疲労が最大の敵でしたね。

 

記憶と注意力も障害があるのですが、記憶は工夫でカバーできます。注意力は慢心と疲れからくるので、この二つに最大限の気配りをしました。

 

運転再開後に最も注意すべき点は?

高次脳の運転再開で一番大事なのは「自分は以前とは違うのだ」という心構えを常にすることです。

 

高齢者の運転に似ているのかもしれませんね。障害を負ったので若いころと比べたら確実に能力は落ちています。だから同じように認知、判断、操作はできないんですよ。そこを認める受け入れる。

 

以前の自分のままでいると事故を起こします。それはダメです。ゆっくり、慌てず、騒がず、平常心を保ち続ける。

 

前方にへたくそな車がいても平常心を保つ。イライラするのではなくSNSやブログのネタをゲットした。と考えればいい。

 

運転に必要なのは平常心を保つ。ですね。そして平常心を保つのが「疲れないようにする」です。

 

だから

  • 無理に長時間、長距離の運転はしない。
  • 少しずつ距離を伸ばす。
  • 適度に休憩をはさむ。

この3つはとても大事です。

 

受傷までと比べてどれほど能力は回復した?

「また慢心している!」
そのように千葉リハから指摘されそうですが…

 

「運転に関しては、前と比べてそん色ないほど回復していないかなぁ?」
なんて感じています。他から見たらどうなんでしょうねぇ?

 

一番私をチェックしているのは妻ですが、以前は助手席で「あーだこーだ」言っていた妻も、今では後ろの席で寝ていますよ…。

 

現状に満足している?

運転能力と疲れやすさについては何の問題もないと思います。だから満足しています。

 

あ、一つだけ困ったことがあります。

 

それは「車をどこに駐車したのかを覚えていられない」です。

 

ショッピングモールによく出かけるのですが、不慣れな所に駐車すると毎回忘れます。だから必ず写真撮影をしていますけれど。これが今の困り事ですね。

 

いつも利用する近所のイオンなどは、駐車する場所を同じにしています。もともとそうだったのですが、同じにすれば迷うことがありません。

 

この先は何をしてみたい?

運転に関していえば「実家への帰省」です。これが目標。コロナが落ち着いたら必ず実行します。

 

もちろん経路の計画もしっかり立てます。三陸地方は道路の開発がどんどん進んで便利になっていますしね。どんどん成長する故郷をじっくりと堪能したいです。

 

今でも運転への障害を感じる?

今現在は運転への障害は感じていません。

 

最近は疲れ果てると記憶が飛ぶことがある。思い出せない。といった現象が起こります。

 

記憶が飛ぶと言っても新しい記憶のみです。日常的に運転している道や交通ルールなどは当たり前のように忘れません。

 

運転で不便なのは「駐車した場所を忘れてしまう。」だけですね。

 

運転再開への手順はどんな印象?

私の場合はこのような手順を踏んで運転再開をしました。

 

  • 千葉リハでのグループリハビリ
  • 千葉リハでの個別のリハビリ
  • 自宅でのリハビリ(千葉リハからの宿題、日常生活、おさんぽ、卵のおつかい)
  • 一人で電車に乗り千葉リハに行く練習
  • 結構な量の心理検査
  • 運転再開に向けての心理検査
  • 千葉リハのドライブシミュレーター
  • 運転再開に向けての診察
  • 提携自動車学校での実車試験
  • 路上での実車試験
  • 免許センターで運転免許の再発行

 

運転再開の流れをもう少し大きくまとめるとこうなりますね。

  • 千葉リハでリハビリをする
  • 千葉リハで心理検査をする
  • 千葉リハでの様子から医師が運転再開へのゴーサインを出す
  • 自動車学校で実車試験を行う
  • 免許再発行

 

一番期間が長かったのはリハビリです。リハビリをしつつ私の脳の回復具合を確認します。

 

リハビリを始めたころは本当に滅茶苦茶でした。

 

ひらがなの組み合わせを消すことすら満足にできませんでしたよ。消したはずなのに消していない。消そうとしたものとは違うものを消してしまうなどなど…。

 

そのような「頭の中で考えていることと、行動がズレてしまう。」という現象の連続でした。これでは運転は絶対に無理です。

 

あとは疲れですね。思考と行動が一致するようになっても疲れやすくては…危ないですものね。

 

具体的にどこに行けば運転再開できる?

私の障害は「疲れる、忘れる。だから目的地にたどり着けない。」というものです。そのせいなのか、大学病院に入院している時点で主治医から「運転再開は可能だと思うよ」と言われていました。この言葉は私を支えてくれていました。

 

その大学病院が千葉リハを紹介してくれました。繋がっているのだと思います。

 

そして千葉リハは千葉の運転免許センターとつながっているんですよね。だから私は大学病院に搬送された時点で運転再開までのルートが用意されていたことになります。とても恵まれた医療とフォローを受けられました。

 

でも世の中には、「高次脳機能障害で症状固定になった。でも運転再開へ繋がれない。」という方がいらっしゃいます。地域差なのかもしれません。

 

以前千葉リハで質問したことがあります「このような障害の場合でも運転再開できるのですか?」

 

診察をしていないので正確な答えにはなりませんが「再開できるでしょうね」と回答いただきました。このような差は無くなって欲しいです。

 

高次脳機能障害の方が運転再開を目指すのなら、千葉リハはベストの選択だと思います。なにせ私が身を持って体験しましたし。

まとめ

高次脳機能障害になって丸三年が過ぎました。

 

現在の運転の状況ですが、一言で言うと「発症前と同じ状態に戻ったようにしか思えない。」です。

 

希望はあります。お互いに頑張りましょう!