高次脳になって性格が変わった?いいえ違います。昔と同じように接してください。

高次脳になると当事者の周囲の人が「性格が変わった」と思うときがあるようです。

 

これって悪い方の意味での性格が変わったです。性格が良くなったときは言われないと思います。

 

確かに、周囲から見たら「病気で性格が悪くなった。」と受け取られても仕方がないと思います。

 

でもわかってほしいことがあります。それは当事者は苦しんでいるということです。

 

当事者は自分で自分の変化に気付いています。「なぜ、こんな行動をとってしまったんだ…」と問題を起こした後に大後悔していたりします(私の場合はですけど)

 

自分でもわからないんですよ。なぜこんなに考え方。モノの捉え方が変化してしまったのかが。

 

感情の起伏もそうですし、記憶障害特有のミスなどもそうです。自分自身が「なぜ?なぜ?」なんですよ。

 

だから、周囲の人にお願いがあるんです。

 

「高次脳になって性格が変わってしまったから、あなたはもうダメなのね。」と一方的に決めつけないで欲しい。

 

ある時は、「なぜそんなこともできないの?お子様?」って思うかもしれません。わかるんですよ。すっごい屈辱を感じているんですよ。それに対して

 

「ダメな奴」というレッテルは貼らないで欲しい。私もそうだし、他の高次脳の方にもです。

 

高次脳機能障害って少しずつ回復していくようです。私の実感ですし、そういう経験をしている方の書籍も出ています。

 

ゆっくりゆっくりと回復していきます。だからお子様扱いはしないでください。わかるんですよ。記憶力と注意力以外は普通の大人なんですから。馬鹿にされたら馬鹿にされたのを瞬時に察知します。そして、こういうネガティブな記憶は確実に記憶に定着します。

 

それどころか繰り返して記憶から取り出されるんですよ。記憶障害って良い記憶は再現しにくいですが、悪い記憶はこれでもかと再現されるようです。不思議なことに。

 

一言ネガティブな印象を抱くと、とことんネガティブになりますから。記憶障害な人と接するときは絶対に気を付けたほうがいいです。

 

繰り返しますが高次脳機能障害って少しずつ回復していきますからね…。健常者時代までに回復した時もしっかり覚えているでしょう。その時に当事者の方が周囲をどういう目で見るか。どういう反応をするか。

 

高次脳機能障害になっても性格は変わらない

私実感しています。高次脳機能障害になっても性格の基本的な部分は変わらないのだなぁって。

 

高次脳になりたての頃が、もっとも「性格変わったのでは?」って周囲感じる時期だと思います。でもこの時期でも性格は変わっていないのだと考えています。

 

自分自身は障害で出来なくなったことが理解できなくてパニックになって大暴れしました。(暴れるというよりも怒鳴りまくり?)

 

これって性格狂暴になったからではありません。パニックを起こしているたのです。

 

例えば海でおぼれたとします。例えば突然人に襲われたとします。

 

どうでしょう?冷静に対応できる人っていますかね?そりゃ慣れている人なら別でしょう。でも初めての経験ですよ?驚きませんか?悲鳴が出ませんか?

 

さらに、それで辛い現実を目の当たりにしたとします。とても悲しいですよね。怒りも沸いてきますよね。これって異常行動でしょうか?いいえ。極々当たり前の反応だと思います。

 

私は普段感情をあらわにしません。無口だし、むっつりしているタイプです。叫ぶ怒鳴るもしません。そんな私が初めての経験に驚き、恐怖して悲鳴を上げる。どうでしょう?これって性格が変わったんですかね?たまたまその人が普段見せない一面
が現れただけなんじゃないですかねえ?

 

感情をあらわにするのは高次脳の症状も原因の一つ

高次脳には感情の抑制が効きづらくなる症状もあります。感情失禁というやつです。笑いやすくなったり、泣きやすくなったり、怒りやすくなったりします。

 

健常者時代なら、これらの感情は理性で抑え込んでいたはずです。でも高次脳になるとこの抑えが利きにくくなります。私はいつも悲しんでばかりいました。夕方になると悲しくて悲しくてたまりませんでした。

 

でもこれって障害の症状の一つなんですよ。性格が変わったわけではないのです。もし心の奥底にそういう性格があったとしても、健康な時なら絶対に表に現れていなかったものです。

 

「人の本質は高次脳機能障害になってもかわらないのだ」自分の経験からはそのような結論に達しています。

 

認知が壊れていてもおとなしい人はおとなしい。でも一時的に感情のふり幅が大きくなっている。健常者時代なら理性で抑え込めていたものだけど、障害の影響で抑えきれなくなっているのだと考えています。

 

自分の場合の感情失禁はこうでした

私の場合は常に恐怖心に襲われていました。

 

元々も臆病な性格です。石橋を叩いて壊してしまうような性格でした。でも注意障害もあるため、大事な確認が抜けてしまい思わぬところで失敗をします。

 

注意を維持するためには記憶力が必要です。だって何に注意するのかを覚えていなければなりませんから。覚えるというのは覚えるだけじゃダメなんです。覚えたものを思い出せないと意味がありません。私は覚えられるのですが思い出せないのです。

 

はたから見れば同じような記憶障害なのですが、私からすると全く意味が違います。頭の中に記憶があるので、ある時をきっかけに思い起こせるんですよね。で、悪い記憶程よくのこる。取り出しやすい。

 

もうね、うんざりしますよ。悪い事ばっかりで。成功経験が思い出せず常に失敗経験ばかりがでてきます。だから常に不安にさいなまれています。行動するのが怖いです。

 

そんな追い詰められた状態ですかねぇ…ちょっとした拍子に爆発してしまうのです。すごく嫌ですよこれ…。

 

高次脳機能障害の辛い症状はどう変化していくのか?

高次脳機能障害は少しずつ良くなっていきます。これが同じような症状を見せる認知症との違いです。回復の未来があるのです。

 

だから今はダメダメだな状態だとしても、「この人はダメになった」と決めつけないで欲しいです。

 

障害者になる前の健常者時代を知っていると、高次脳になった後とのギャップが凄いと思います。絶望するかも知れません。期待する答えが返ってこないかもしれません。それでも少しずつ回復すると思います。

 

高次脳になりたてだと当事者は大パニックを起こしています。周りに配慮する余裕なんてありません。深い海でおぼれている待っ最中なのですから。

 

当然、自分の事しか考えられません。複雑なことを考える余裕はありません。そもそも易疲労であっという間に疲れてしまいます。強い恐怖心に襲われます。

 

恐怖心は焦りに繋がります。本人は自覚しています。だからますます焦ります。焦るとさらに恐怖心が増大します。

 

「こんな滅茶苦茶な状態では周りから見捨てられる」

 

こういうことも考えてしまいます。心底恐ろしいです。

 

自分が行ってしまった行動にも恐怖を感じています。本来の自分の行動と違うのを身をもって知っているからです。「なぜ、こんなに怒りやすくなったのだろう?」と震えています。

 

そんな時に周囲から…「性格が変わった」と宣言されたらどうでしょうか。

 

逃げ場がありません。殻に閉じこもって自己防衛するしかなくなります。行動なんてもっての他です。

 

その結果待っているのは【引きこもり】【認知症】なのではないでしょうか?

 

欠けてしまった能力以外はすべて元のまま

高次脳の厄介な所(幸いな所)は欠けてしまったのうりょくいがいは昔と変わらないという点です。この能力のアンバランスさはきついです。

 

一番きついのは周囲から正当な評価をされなくなる点です。

 

私の経験ですが、高次脳機能障害になるともっとも欠けてしまった能力を基準にして全体を評価されてしまうようです。

 

経験しない事には想像できない状態なので当然かもしれません。これはもう諦めるしかないと思います。人は経験したことのないものは想像できないのですから。

 

ただ、これだけは注意したほうがいいと忠告が一点。それは絶対に当事者を見下ろした態度を取ってはならないということです。本当に強く思います。

 

記憶障害だとすぐに忘れてしまうので、見下して馬鹿にした態度をとってしまうかもしれません。でも他の部分は普通なんです。

 

例えば計算。絵を描く。料理を作る。物を作る。速く走れる。スタミナがある。力の強さ。などなど…。かけた能力以外は普通なのです。この部分がとても大事です。

 

全部の能力が劣ってしまったわけではありません。かけた能力を基準にして全体を測るのは絶対にやめた方がいい。

 

馬鹿にした態度を取られたら瞬時に読み取りますから。子供ではないので。

 

これって、プライドをひどく気付付けます。

 

で、怒りが湧きます。自分に対する怒りがです。

 

     

  • 周囲から見下されている現実
  •  

  • 障害の自覚があるけれどどうすることもできない
  •  

  • 見放されるのでは?という恐れ

 

さらには、とっさの時に感情失禁で今までなかった反応をしてしまったり…。

 

元々の性格を知っているのは当事者です。

 

周りから「性格が変わった」と評価されると、当事者は追い込まれます。焦ります。

 

自分のために殻に閉じこもります。行動しなくなります。なども繰り返しますがそれだけは避けたいです。未来が無くなりますから。

 

高次脳機能障害は他人事ではありません

私はインフルエンザで高次脳機能障害になりました。ウイルスが体内に侵入して強い免疫反応が起こったからです。

 

サイトカインストームと言います。白血球がウイルスを排除しようと攻撃すると同時に、体の中も傷つけてしまうのです。その時脳に傷が付きました。

 

サイトカインストームはコロナに感染しても発生します。だってウイルスへの反応ですから。コロナの患者の全身の内臓から出血…って話がありますがサイトカインストームの結果です。

 

つまりコロナで私と同じ高次脳機能障害になってもおかしくはないということです。他人ととではありません。すぐ隣に落とし穴は開いています。

 

不幸にも身近な人が高次脳機能障害になってしまったら、

 

「行動が健常者時代とは違っていても、本質的な部分は何一つ変わっていないのだ。」

 

ということを頭の片隅に置いて接してあげてください。お願いします。