高次脳機能障害の記憶力強化|誤った想起でミスをしないために

高次脳になってから妻によく言われる言葉があります。それは

 

「融通が利かなくなった」

 

です。どうやら私は

 

「障害の影響でとんでもない頑固者になってしまった。」

 

そう評価されているようです。

 

普段私は

     

  • 「妻の言葉は絶対だ!」
  •  

  • 「妻の言うことは正しい!」

 

そう考えるように努めています。

 

でも、たった一つ。

 

「融通が利かなくなった」と評価されるのだけは納得がいかないのです。

 

このように考えてしまうのも融通が利かないからなのでしょうか?

 

でも間違いは間違いです。正さなければなりません。

 

私はこう考えています。

 

「同じ出来事でも、当事者からと周囲。それぞれの視点では評価が異なる」と。

 

果たして私は融通が利かなくなったのでしょうか?それとも、このように考えてしまうことそのものが融通が利かなくなったからなのでしょうか?

 

エピソードを書いてみたいと思います。

 

高次脳で融通が利かなくなったと評価されたお話

あるお休みの日の前日の事です。夕飯の準備をしていると妻に「お出かけしよう!」と誘われました。

 

私は「お出かけ」と聞くと真っ先に頭の中に思い浮かべるのが「幕張のイオン」です。あそこはとても大きくて何でもあります。私はイオンが大好きです。毎日のお散歩でもイオンにお使いに出かけます。

 

しかし今回は違いました。「明日は幕張のイオンではなく酒々井アウトレットパークに行く」と伝えられました。

 

ちょっとがっかりしましたが、お出かけは大好きです。酒々井でも全然OKです。

 

「明日は酒々井アウトレットに行くぞ!」

 

その時は納得しました。間違いなく。

 

一晩たつと記憶がリセットされる?

次の日の朝の事です。目が覚めたときこう思いました。

 

「今日はお出だけだ。うれしいなぁ。幕張のイオンだ。やったー!」

 

前日に約束したのは「酒々井アウトレットパークです」でも次の日頭の中に思い浮かんでいたのは「幕張のイオン」でした。

 

少し前なら「幕張のイオン」のまま布団から抜け出して妻を驚かせていました。

 

でもこの日は違っていました。障害から3年目を迎えて、だいぶ記憶力が回復してきているんですよね。

 

「あれ?ちがうな。幕張イオンじゃなかったぞ。」

 

自分が勘違いしていることに気づけました。

 

これは障害の改善がまだ続いている証拠なのだと思います。うれしいです。

 

でも手放しで喜んではいられません。なぜかというと「どこに行くんだったかな?思い出せないぞ…」こういう状態なんですよね。未だに。

 

布団中で延々と考え続けました。幕張イオンではないことは自信がありました。でもどこに行くのかはなかなか思い出せません。

 

私は思い出せないことがあると出来るだけうやむやにしたくなりません。時間の許す限り思い起こそうと努力します。この思い起こす行為は脳にいい刺激になるはずです。

 

ただしあまりにも全力で記憶をたどると酸欠になってしまうので加減は必要です。

 

最近は酸欠や易疲労を起こさないように記憶をたどるのが上手になってきたようです。このような事を繰り返すのも記憶力改善のリハビリなのだと思います。

 

少し考え込むと「そうだ!酒々井だ!」という結論にたどり着けました。

 

我ながらすっごい進化したと思います。自分をほめてあげたいです!

 

記憶障害でも自分の記憶に自信を持つために

後から思い出した酒々井が正しいと思えるたのは理由があります。

 

それは、何をしいにくのかの理由も思い出せたからなんです。

 

     

  • なぜ酒々井アウトレットパークに行くのか
  •  

  • 何を購入するつもりなのか
  •  

  • 子供のトレーナーを買いに行くからだ
  •  

  • 子供はいつも同じメーカーの服を着ている
  •  

  • 同じメーカーなのは昔からのこだわりから
  •  

  • このこだわりは妻も子供も気に入っている

 

このような理由を前の晩に妻から物語調で聞いていたんですよね。

 

夕飯を作りながら妻から聞いた話なので、その時の光景と共に理由を思い出せました。

 

記憶って論理的な情報ではなくて、エピソードを交えた物語的な情報の方が頭の中にとどまりやすく、引き出しやすいようなんです。これ、心理科の先生にも言われました。

 

私は記憶を引き出す力に障害を受けています。記憶を脳に刻み込む力と保存しておく力には問題が無いそうです。

 

ちょっとしたきっかけがあると、次々と記憶を呼び起こすことが出来ます。この現象はちょくちょく体験しています。

 

以上の経験から、私の記憶障害(想起する力が弱っている)への対処法はこうなるんじゃないのかな?と思いました。

     

  • 伝える側は目的と理由をセットにして伝える。
  •  

  • 理由に重点を置く。
  •  

  • 理由は物語調で伝える。
  •  

  • 頭の中で風景を想像できるように伝える。

 

このように記憶障害を持つ私に何かを覚えて欲しいのであれば、事務的に必要な情報のみを伝えるのではなくて「理由を添えて情報を伝える。」のがベターなのだと思いました。

 

理由を記憶に定着させられると、目的も紐づいて想起できるようです。

 

さらに強く理由を記憶に定着させるには「物語調で理由を伝える。」とベストだと思います。頭の中に映像が浮かんだ記憶はとても思い出しやすいです。

 

さらにさらに記憶を強化するためには、「時間をおいて反復する」も良いですね。私はここまでやると正しく思い出せるようです。

 

ちなみに慢心して記憶の手を抜くと、一番最初に思い出した記憶を最優先して行動してしまいます。

 

優先順位はインパクトの高い記憶。自分の欲望に沿った記憶ですね。

 

私は高次脳機能障害になって「融通が利かなくなった」と言われますが、その原因がまさしくコレなんですよ。記憶を引き出すのがへたくそなんです。

 

「どうしても幕張イオンに行きたい!」って考えているわけではなありません。酒々井アウトレットパークでも全然OKです。

 

本当に融通が利かなくなったのならきっと「俺は幕張に行きたいんだよ!」って怒るはずです。私はどちらでも構わないから怒りません。でも記憶違いのせいで「融通が利かなくなった」と言われるんですよね。とても辛いです。

 

まとめると

 

「私と約束する場合は必ず理由を添えないと、私の都合のいい行動をとってしまう。」

 

こんなわがまま状態になってしまいます。とんでもないことですが、これが自分で現状分析した自分の記憶障害の正体です。自分の好きな記憶を呼び起こしてしまう。なぜなら記憶を書き込むときに「いいねぇ!」という感情のラベル付きで書きこんでいるから。

 

しかし現状分析ができたら対策もできます。対策法は「理由を添える」です。

 

そして記憶を強化するためには「物語調で情景を伝える」と「反復」です。

 

きっと他の記憶障害の方にも使えると思います。特に「記憶を感情に引き込まれてしまうタイプの記憶障害」の方には。

 

記憶強化法として試してみてもいいかもしれません。