インフルエンザ脳症で入院しているときは、退院後はすぐに仕事が再開できると考えていました。全く疑っていませんでした。だって自分の脳がダメになったなんて夢にも思っていませんでしたから。

 

でも現実は残酷でした。刺激もない入院生活をしていた時には全く想像できなかった現実が待っていたのです。

 

仕事が進まない…障害との闘いの始まり

退院してから二週間はゆったりとした毎日を過ごしていました。病み上がりのためゆっくりて現実世界での暮らしに体を慣らそうと考えたからです。

 

じっくりと英気を養い、気力だけは十分な状態になってから仕事に取り掛かりました。

 

しかし思うように頭が働きません。例えていうのなら…

 

  • 思考が点から線に繋がらない。
  • 目にした瞬間の情報しか頭の中に残らない。
  • 少しの刺激で記憶が途切れてしまう。
  • 時間がたつと思い出せない。
  • 思い出したことが事実と違う。

 

今まで生きてきた中で一度も経験をしたことのない状態に陥っていました。

 

記憶が途切れたら途中から振り返ればいいのです。

 

しかし途中からの情報では仕事の経緯が理解できない事に気が付きました。だって振り返って頭に入れたはずの記憶が、数分もしないうちにボロボロと抜け落ちていくのですから。

 

「だったら再び最初から振り返ればいい」

 

どんなに時間がかかろうとも、最初の仕事の依頼が来た所からやり直そうとしました。

 

私の仕事はシステム開発だけではありまぜん。定期的に決まった手順でデータを加工する仕事も行っていました。WEBサイトを更新する仕事もありました、人にものを教える仕事もしていました。色々な仕事を同時進行していたのです。

 

しかし病気のために仕事の手順が思い出せません。そこで仕事の手順書を作りました。しかし今度は作成した手順書の保管場所を忘れてしまいます。そのため何度も同じ手順書を作ったりもしました。

 

手順書を作ったらそれで安心というわけでもありません。手順の変更が入ると手直ししなければならなりません。

 

すると今度は、どれが手直しした手順なのかが解らなくなります。管理が出来ないのです。

 

作成した手順書を見失っては作業が出来なくなります。また新たに手順書を作り始めなければなりません。それを恐れた私は、パソコンの至る場所に手順書を保管しはじめました。

 

これで一安心…と思いきや新たな問題が発生しました。

 

今度は同じような手順序が保管されてしまい、どれが本当の最新の手順書なのかが解らなくなってしまうのです。どれも微妙に違っています。どれかが正解なのかはわかります。でもどれが正解なのかがわからない。

 

「日付を書いて管理をすればいい?」

 

わかります。でもね。その日付が書いてある手順書が最新だという保証がどこにもありません。もしかして別の場所に新しい手順書があるかもしれないのです。もうぐちゃぐちゃです。

 

いくつも同じ手順書を作るのは、作ったことを忘れてしまうからです。保管場所を統一すれば良さそうですが、その肝心の保管場所がどこなのかすらも覚えられないのです。

 

「メモを取れば良い?」

 

記憶障害の私にとって、メモは私を助ける命綱です。でもメモそのものが私を混乱に陥れてしまいました。そもそもメモの存在を忘れてしまうこともあるのです。

 

「ならメモを常に目につく場所におけば良いのでは?」

 

そうですね。ノートへのメモは閉じてしまうと見失ってしまいますし。

 

しかし…。

 

その結果採用したメモが、ディスプレイ周りに貼る付箋なのでした。でも付箋で増殖するんですよね。あっという間に机周りが付箋だらけになってしまいました。どれがすぐに必要な情報なのかが解らなくなってしまいました。

 

「用事が済んだ付箋は剥がせば良いのでは?」

 

と考えますよね。普通は。しかし…

 

付箋を剥がすにはとても勇気が必要でした。だって後で使うかも知れないと考えると付箋が剥がせなくなるんですよ。とても怖いんです。付箋をはがすのが…。

 

こうして私の記憶力をカバーするはずの付箋は、自分を混乱させる原因になりました。

 

ディスプレイ周りが付箋だらけになってしまい、どれが必要な付箋なのかを見失うようになったのです。

 

必要な付箋がどれなのかパット見て解らない。剥がれ落ちてしまうこともあります。それがさらに混乱に拍車をかけました。

 

結局付箋は助かる点もありましたが、よけいな混乱も招くこととなったのです。

 

記憶障害の仕事メモの工夫

幸いにも私は記憶力が戻る傾向にありました。そのため時間の経過とともに付箋の数は減っていきました。

 

またIT機器を使って記憶障害をカバーする工夫をしたので、泥沼の付箋地獄からは解放されました。

 

「紙のメモは記憶のサポートにはならない。」

 

これが私が出した結論です。

 

紙へのメモって気軽にササっとかけるのが特徴です。ノートでも付箋でも。それが数枚なら管理もできると思います。

 

でも「仕事で使うメモは手軽さよりも過去の記録をいかに素早く検索できるか?」のほうが大切な事に気が付きました。

 

そこで私は記憶をサポートするメモを2種類持つことにしました。

 

一つは付箋やノートの紙。もう一つはEXCELのファイルです。

 

付箋やノートなどの紙でのメモ

こちらは「すぐにメモを取る必要があるとき」に使用します。

 

例えば電話や外での打ち合わせ。お散歩のときに気付いたことを書くなどですね。

 

紙へのメモの特徴は何といっても「気軽にさくっと!」ですね。絵も描けます。自由度が高いです。

 

普段はポケットに正方形サイズの付箋とボールペンを必ず忍ばせています。千葉リハに行くときはB5ノートを持っていきます。

 

こうして普段の行動を全て紙に記録しています。

 

スプレッドシート(EXCELみたいなやつ)でのメモ

こちらは「整理整頓された情報」です。

 

こちらは仕事の予定です。何月何日にどんな仕事をするのかと、何をしたのかを記録していきます。

 

EXCELへのメモの特徴は何といっても「一覧表にできる」「検索ができる」ですね。主に文字だけですが、詳細に記録が残せるので、後で過去を振り返るときに大変重宝します。

 

普段は、Googleドキュメントに月ごとのシートを作って予定と実績の管理をしています。客先ごとに項目を分けることで、「今日の仕事は〇〇会社の△△だな」と一目でわかります。

 

PCで入力した予定をスマホからも確認できるのもいいですね。

 

エクセルファイルでのスケジュール管理は結構使いやすい。なんといっても自由度が高い。シートも増やせるためシート毎に仕事の情報を区分けしながらまとめておける。メールのやり取りは一つのシートで上から順番にやり取りを並べてひとめでやり取りが確認できるようにしている。