当たり前に出来ていたのに…高次脳機能障害で現れた3つの壁

障害を負う前に当たり前に出来ていたことが出来なくなりました。

 

出来なくなった分は妻がフォローをしてくれるようになりました。

 

ここまでなら美談ですが…。

 

現実は違っています。もっと複雑でドロドロしていました。

 

私には「出来ていた頃の自分」の記憶が残っています。感覚的に「この作業ならこの程度で終わるだろう」「できて当たり前」という計算をしてしまいます。

 

障害を負う前だったらそれで正解ですが今は間違いです。

 

自分の希望と妻のフォローを照らし合わせてしまいます。そして自分が願った結果に満たないと強く不満に感じてしまう。イライラしてしまう。

 

現実の私は結果が出せないのです。もう昔の自分はいないのです。だからフォローしてもらっています。でも頭の中にいるのは昔の自分。理想的な自分。

 

障害を受け切れていないと、このような矛盾が発生します。そしてフォローしてくれる周りを傷つける。辛い思いをさせてしまう。

 

今はこうして文章にまとめられるようにまでなりました。身に染みて障害を自覚したからです。以前よりも障害を受け入れられているのだと思います。

 

【障害の克服とは困り事を無くすこと。困らなければ障害ではない。】

 

この考え方で、いろいろな困り事を乗り越えてきたつもりでした。障害の受け入れもやっとできてきた…そう思っていたのですが…今朝新しい困り事にぶち当たりました。

 

正確には新しく発生したトラブルではありません。何度も経験して酷い目にあっています。それでも困り事という認識が無かったのです。壁だと気づけなかったのです。

 

以前は壁の高さを把握できずに丸腰で向かいボロボロになっていました。

 

障害という壁にやみくもに飛び掛かっても克服は難しいです。とにかく自分のメンタルがメタくそにやられます。周囲も疲弊します。

 

だから今回の気づきをきっかけに、あらためて冷静に障害に向き合い、穏便に克服し続けられるようにしたいと思います。

 

障害を持ってできなくなった、心に負担のかかるもの達

この1年半を振り返ると、障害を負ってできなくなった物事が3つ発生していた事に気が付きました。

 

その3つを紹介します。一つはだいぶ克服しています。何か月もかかりましたケド。ゴールまでもう少しです。

 

障害1:仕事上のやり取りができなくなった

私はコンピュータシステムを作る技術屋です。「高次脳機能障害の人がやる仕事ではない」と大学病院の主治医から言われた仕事です。

 

なんとか1年半やり続けました。絶対に譲れない意地を通しました。私はとんでもない頑固者のようです。高次脳機能障害になると融通が利かなくなるそうですが、頑固がパワーアップしたようです。

 

その頑固が幸いしてか、健常者時代と同様の仕事を続けられるようになりました。

 

「やればできるんだ」「障害は克服できるんだ」という自信が少しずつ回復しています。

 

ただ、「障害が酷くてダメだった頃の恐怖心」は残っています。

 

心の安定も相手の仕事能力に左右される感じです。自信をもって相手をリードできません。

 

以前の私だったら「私こそが正解!私の指示に従えばよろしい!」そんな感じで自信に満ち溢れていました。

 

今は「これで良いのかな?大丈夫かな?不安だな…心配だな…失敗したらどうしよう。」こんな気持ちに支配されています。

 

常に不安感に襲われています。

 

酷い時は朝PCの前に座ると吐き気に襲われていました。仕事が怖すぎて。

 

でも、記憶力が戻ると同時に落ち着いてきました。仕事のへの恐怖心はだいぶ克服できたかなぁ?と今は感じています。完全復活まではもう少しですね。

 

障害2:子供がらみのトラブルの対応が出来なくなった

子供は小学生です。友達と毎日遊んでいます。みんな仲良く遊んでくれたらいいのですが、中には意地の悪い子もいます。卑怯にも数人がかりで理不尽なことをしてくる子供がいます。

 

いわゆるいじめです。

 

酷い時には、下校中に車道に突き飛ばすという命に係わる出来事もありました。

 

以前の私は、子供がしょんぼりしたまま帰ってくるようなことがあれば「負けるな!やり返せ!」とはっぱをかけるタイプでした。学校にいじめの状況を伝える手紙を書いたこともあります。

 

ところが障害を負ったら…

 

「なんでゴタゴタを私に聞かせるんだ!そんなことに構っている余裕はないんだよ!」

 

「なんでだよ!なんでいつも問題ばかりが起こるんだよ!」

 

と、理不尽に切れるようになってしまいました。気持ちに全然余裕がなくなったのです。自分の事だけで精一杯です。子供は置き去りです。

 

とにかく平穏に元の世界に戻ろうとしている私を邪魔する連中の存在が許せない。そういう感情が湧いてくるのです。

 

そして怒り爆発。

 

悔しいし、いじめはきっちりとした態度を見せないとエスカレートします。だから加害してくる子供の家に乗り込んで直接注意しようとしました。

 

でも家族に止められます。私が乗り込んだら大問題になりそうですから。

 

もちろん暴力なんて振るいません。捕まってしまいます。だから理詰めで問い詰めます。こちらの怒りの意志は絶対に相手方に伝えなければなりません。

 

いじめに関しては学校を巻き込んでトコトン大問題にすべきです。中途半端に手を打つと隠れて悪さをします。被害にあうのはうちの子です。

 

子供が車道に突き飛ばされた時は妻が全てフォローをするという約束で、私が乗り込むことはありませんでした。

 

それ以降いじめの話は聞きません。私に内緒にされているのか、本当に問題なく過ごしているのか分かりません。

 

ひとつ理解したのは「私は子供のトラブルに関わってははならない。」ということです。

 

この一件で自覚・納得したので関わってはいません。子供がらみのトラブル対応は心理的な負担が大きいです。

 

もしかすると、今は冷静に対処可能なのかもしれませんが…問題なく仲良く過ごしていればいいなと祈っています。

 

情けないですけど。これが私の障害の現実です。

 

障害3:お金の管理ができなくなった

最後の問題はお金の管理です。日常レベルのお金の管理なら問題なく可能です。厳しいのは個人事業主独自の問題です。

 

いわゆる「会計処理」です。

 

会社勤めな方には関係ないのですが、私は自営業なので税務署に申告をしなければなりません。売り上げや経費、減価償却など色々と面倒なものを1円も逃さずにです。

 

それが、、、とても辛い!!!! っていうか出来ない!!!!

 

以前は青色申告処理を私が一人で行っていました。病気になってからは妻が行っています。

 



病気をしてわかりました。お金の管理って本当にきついです。しんどいです。辛いです。通帳なんて見たくない。

 

病気をして以来、収入は激減です。それを数字で、まざまざと見せつけられます。一気に酸欠。ハァハァ言い始めます。

 

「うそだろ…なんでこんなにお金がないの…」自分自身の貯金を確認して真っ青になります。

 

もうね。現実に耐えられない。きついです。以前の私だったら「ここから盛り返してやる!」なんて頑張れましたが、今の私は踏ん張れません。すっごい弱気。情けないです。

 

お金が無いなら無いなりに工夫で対応できそうですけど…お金って魔物ですね。自分の身を削られていくような感覚になるんですよね。

 

通帳を見た時、本当に思いました。「お願いです。私にお金の管理をさせないでください。」って。

 

頼りない…情けない…会計ソフトが使えない…

私は「弥生の青色申告」という会計ソフトを使っています。1年分の入力をして、知り合いの会計事務所にデータを渡して、税務署に申告してもらっています。

 

これがまた一気に大変になってしまいました。データの入力とやり取りが出来ないのです。

 

「会計期間?…めんどくせぇ!」

 

こんな状態です。

 

もともと経理に詳しくないのですが、障害を負ったら入力作業がますますわからなくなりました。

 

こうなるともう怒りモード突入です。

 

「めんどくせぇ!税金なんて払わねえ!」
「全部差し押さえでも何でもいいよ!」
「みんなくれてやるわ!」
「通帳なんていらねぇ!貯金なんていらねぇ!」
自暴自棄になります。本気で「どうでもいいや」
という気持ちになります。今の私はお金の管理ができません。命と直結するお金が怖くて仕方がないのです。
だから妻が会計事務所とやり取りをするようになりました。

 

しかし妻はパソコンのことがさっぱりわかっていません。「ファイル?フォルダ?保存?なにそれ?」です。

 

健常者時代はお互いの長所を生かしあっていたのが全部裏目に

私はシステムエンジニアです。当然ファイルやフォルダはわかります。会計のシステムも作れます。お金の計算はできるのです。

 

でも自分のお金には触れることが出来ません。恐怖にとらわれてしまいます。

 

妻はお金の管理に強いです。もともとお金を扱う資格が必要な仕事をしていました。でもパソコンの操作がダメ。

 

健常者時代はお互いに足りない部分をフォローしあってうまくいっていました。でも私が障害を持ったら全くダメダメになってしまいました。

 

原因は私です。私が病気をしなければよかったのです。でも現実は…。

 

「なんでこんなこともわからないんだよ!」

 

パソコンを操作できない妻に怒り爆発です。

 

病気をした私が悪いんです。でも、一番頼りにしている妻の苦手な部分にぶつかると、どうしても頼りなく感じてイライラがたまってしまいます。

 

欠けてしまった私の能力と同じレベルを相手に要求しているのはわかっています。もともと無理をしてもらってるんです。でもイライラが止まらないのです。(自動車運転も同じでした)

 

「怒らないで!」
「イライラしないで!」
「大きい声を出さないで!」

 

何度も注意されました。そうなんですよね。全部自分が障害を負ったのが原因なんです。わかっています。辛いです。私のせいで周りはみんな不幸です。

 

「私はここにいないほうがいい。」

 

何度か考えたことがありました。でも今はここにいます。やるしかないのです。イライラせずに。静かに。淡々と。

 

高次脳機能障害となり1年と半年。やっと壁を乗り越えた?

今朝、妻が会計の作業をしていました。そしてまた同じような所で躓いていました。フォルダやファイルの管理ができないようです。

 

私はできることをしてあげました。スムーズに問題を解決できました。

 

感情が揺さぶられてイライラして怒るようなことはありませんでした。

 

「ようやく心が落ち着てきて、冷静にフォローできるようになったのかな?」と思いました。

 

余裕が出てきたのだと思います。余裕は「それでもやれている」という1年半の経験の結果だと思います。

 

でも油断するとどこで昔の自分が暴れだすかわかりません。常に意識していこうと思います。

 

かならず以前の自分を取り戻してみせます。