千葉リハで受けた二つのリハビリ|高次脳の現状把握って意味があるの?

私は1年間にわたり千葉リハビリセンターで2つのリハビリを受けました。

     

  • 高次脳機能障碍の当事者たちが集まって行うグループリハビリ。
  •  

  • 作業療法士さんと一対一で行う作業療法

 

今となってはこの二つのリハビリは受けて良かったと感じています。得るものが沢山ありました。

 

でも、1年前に初めて話を聞いたときは「どうなの?」「これ意味があるの?」って感じていました。

 

リハビリそのものは受けたいと感じていました。猛烈に。絶対に障害を克服したかったですから。

 

でも、リハビリの内容が「自分が想像している理想のリハビリ像」とは違っていたのです。

     

  • それでいいの?
  •  

  • 大丈夫なの?
  •  

  • 違うんじゃないの?
  •  

  • 意味ないでしょ…

 

妻も同じようなことを言っていました。通うだけでも片道1時間30分もかかりますし。電車代だって必要。それに「高次脳は日常生活がリハビリ」という言葉も聞いていましたし。

 

正直、千葉リハでリハビリを受けた当初はがっかりしていたものです。

 

虚しさも感じていました。「周りではみんな働いているのに、自分だけ何やってるんだろう」って。

 

でも、やるからにはまじめに。全力を尽くしたい。それに一生に一度の経験かも知れないので、本来の高次脳のリハビリ以外の目標も建てました。

 

「千葉リハのリハビリで、どんな効果が得られるのか?高次脳機能障害のリハビリ体験レポートを作るのを目標にしよう!これは取材活動だ!」と割り切って受けてみることにしました。

 

もし今、高次脳機能障害のリハビリの効果に疑問を感じて、受けようか迷っている方がいたらぜひ参考にしてみてください。

 

高次脳のリハビリの目的は現状把握だって!?

リハビリと聞くと「治すもの」というイメージを持っていました。だから高次脳のリハビリを受けたら、記憶障害が改善していくものだと考えていました。

 

でも千葉リハ(たぶんココだと思います)からは違う説明を受けました。

 

「リハビリは現状把握が目的です。」

 

…?…意味が分かりません。何を言っているのでしょうか?

 

現状把握なんてできています。大学病院で診断書が出ています。インフルエンザ脳症で高次脳機能障害になったのはすでに理解しています。

 

インフルエンザでサイトカインストームを起こして海馬に傷がついて短期記憶障害になったんでしょ!?

 

短期記憶障害を「治療したい」「記憶力を取り戻したい」んですよ!

 

それなのに…

 

「リハビリは現状把握が目的です。」

 

この言葉の意味を理解するのは、千葉リハのリハビリを終えてからになるのでした。

 

千葉リハで受けた2つのリハビリ

千葉リハでは2つのリハビリを受けました。

     

  • 私と同じ高次脳機能障碍者が数名(6~7人)ほど集まって行う、グループリハビリ
  •  

  • 作業療法士さんと1対1で行う作業療法

 

それぞれを受けた感想はこんな感じです。

 

グループリハビリとは

参加者全員で高次脳機能障害について学んでいく教室でした。

 

高次脳機能って、遂行機能、注意力、記憶力…などの高い脳の機能の事を指します。

 

これらについて参加者の皆が学んでいくのですが、事例を一人ひとり発表したり、問題を解いたり…など、目で見て手で触れて発表しあって…って感じで和気あいあいと進んでいきました。

 

作業療法とは

こちらは作業療法士さんと1対1で課題をこなしていきます。

     

  • 紙に描いてある絵や文章を覚える。
  •  

  • 覚えた絵や文章を紙に書きだす

このような記憶に関する課題はもちろんのこと、電卓を作った計算、パソコンを使った文字の入力なども、時間を測りながら行いました。

 

グループリハビリ違い、作業療法は課題の一つ一つ課題が私の弱点をピンポイントで突いてくるものばかり。短時間なのですが、毎回かなり疲れました。

 

千葉リハでリハビリを受けて感じていた事

正直言ってやっている最中に、とてもむなしくなりました。

 

「俺何やってるんだろう…」
「みんなは外で元気に働いているのに。自分は…」

 

世の中から隔離された感がして、とても精神的にきつかったです。

 

「これ、やる意味があるんだろうか…」

 

ずーっと葛藤との戦いでした。でも手は抜きません。やるからには全力です。「きっと何か意味があるんだ!」「その意味がまだ解っていないだけなんだ!」そう自分に言い聞かせながら千葉リハに通いました。

 

自分との戦いだったと思います。

 

千葉リハで受けたリハビリの意味が分かった!?

千葉リハでのグループリハビリと作業療法の意味が分かりはじめたのは、運転免許をとれるまでに回復した時でしょうか。

 

「きっとこういうことなんだろうな。あの空しく感じていたリハビリの目的は…。」

 

高次脳機能障害は人によって状況が違いますから、万人に当てはまるわけではありません。あくまでも私の事例です。

 

高次脳機能障害のリハビリの目的

私の高次脳機能障害のリハビリには二つの目的があると考えました。

     

  • 次のステップに進めるかの判断材料に使う
  •  

  • 運転制限を受け入れさせるための説得材料に使う

 

高次脳機能障害って見えない障害って言われています。

 

内部障害のため外見が他の人と変わりなく見えます。だから他の人からは違い解らない。こういうことなんだと思っていました。

 

でも今はもう一つ意味があると考えています。それは、「自分から見ても、自分の障害がわからない。」これって相当大きな壁だと思いますよ。

 

私自身は「自分はインフルエンザ脳症で高次脳機能障害になった。記憶障害、注意障害、遂行機能障害がある」と認識しているんですよ。

 

大学病院と千葉リハの心理検査の結果から。だから自分の障害を理解している。そう考えていました。

 

でもそれでは全然ダメ。まったく理解していない。そう考えています。自分にダメ出しです。「高次脳のリハビリは現状把握が目的。」千葉リハから最初に伝えられたこの言葉。

 

「あ!なるほど!そういうことだったのか!」と実感をもって理解できる状態になるのが、高次脳機能障害のリハビリのゴールなのかなぁ?なんて思っています。

 

高次脳のリハビリ。自分なりの答えはコレだ

高次の脳リハビリの答えは人によって違うのかな?と思います。でも根本の軸があっていれば正解なのかな?とも思います。

 

というわけで、自分がたどり着いた高次脳のリハビリの意味を説明します。1年前に千葉リハから説明を受けて「それって、する意味があるの?」と感じた自分への答えでもあります。

 

私は、目標に達するためにの行動は、このように分解できると考えています。

     

  • 目標・・・目標値を定める
  •  

  • 現状・・・今の状況を把握する
  •  

  • 対策・・・目標と現状のギャップを埋める
  •  

  • 実践・・・ギャップを埋める行動をとる

 

この4つの項目に千葉リハでの経験を当てはめるとこうなるのでは?と考えました。

 

リハビリの目標を設定する

なぜリハビリをするのでしょうか?

 

元のような生活が送れるようになりたいからだと思います。だから「元のように何不自由なく元気に活動できるようになりたい」って目標が浮かぶと思います。

 

でもコレだと範囲がとても広い。そして抽象的。具体的じゃない。

 

抽象的な目標を設定すると、「じゃぁ具体的にリハビリはどうすればいいの?」という話になってしまいます。リハビリメニューがぼやけてしまいます。

 

だからリハビリをする際は、具体的な目標を定める。それが出来るようになるのをゴールにして、リハビリメニューを組み立てる。

 

こうなるのが理想形なんだろうなぁ…なんて思いました。

 

高次脳障害の現状を把握する

リハビリ目標が定まったら「じゃぁ目的に達するためには何をすればいいの?」となりますよね。

 

何をすればいいんでしょうかね?リハビリセンターにはたくさんのリハビリメニューが用意されているはずです。

 

例えば二人の対象者がいるとして、二人とも「パソコンでEXCELが使えるようになりたい。」を目的にしているとしますよね。

     

  • 一方はバリバリにパソコンの操作ができます。でもEXCELは使ったことがありません。
  •  

  • もう一方はPCの電源を入れる方法すら知りません。

 

EXCELを使えるようになるというゴールは同じですが、スタートラインが全く違いますよね。まさかバリバリにパソコン操作ができる人に「電源を入れるときはこのボタンを押します」なんて説明…必要ないですよね?

 

逆にパソコンの電源を入れたことすらない人に、EXCELの機能の説明をしてもチンプンカンプンでしょう。

 

同じことが高次脳機能障碍者にも言えますよね。でも見えない障害なので一見しただけでは障害の度合いはわかりません。

 

だから何らかの手段を用いて、障害の度合いを測る必要がある。そうして高次脳機能障害の状態を理解する。これこそが目標への第一歩なのだと思いました。

 

目標に達成するためのステップを決める

当事者自身が達成したい目標と、当事者の今の状態。この二つが明確になることで初めて、どのようなリハビリをすればよいのだろう。という段階に進むのだと思います。

 

現状と目標が具体的。なおかつ数値化できると良いですね。数値は変化をグラフ化できます。グラフ化できるということは回復の度合いを目で見て理解できるようになるということですから。とても分かりやすい。

 

ここは千葉リハの方々が、もっとも良い方法を考えてくれますので全部お任せです。

 

目標に向けて実践する

目標に向けて具体的に何をするとよいのかが決まりました。ここまで道筋が出来たら…あとはそれを信じて突き進むのみ。

 

時々「なにやってるんだろう」と空しくなることもありました。でも、定められたリハビリをこなしていけばゴールに向けて確実に進める。だからまじめにコツコツやる。

 

そんなことを考えながら、千葉リハに通いました。

 

ホント「なんなのこれ?子供じゃないのよ?」って感じるような課題でした。

 

でも、絶対プラスになるから。絶対まじめに取り組んだ方がいいですよ!

 

千葉リハのリハビリを終えた今の状況

最初は空しく感じた高次脳機能障害のリハビリ。

 

それでも何か意味があるのだろうと、超まじめに取り組みました。すべてに全力を尽くしました。

 

そうしてよかったと感じています。

 

おかげで救急搬送された当初からの念願だった車の運転ができるようになりました。

 

まだ制限はあると考えています。「どのくらい運転するかは自己判断に任せますよ!」という自主的な制限です。きっと「慢心して油断をするな」という戒めの意味もあるのかと思います。

 

千葉リハのリハビリを受ける意味まとめ

 

私の目線で千葉リハでのリハビリをまとめるとこんな感じです。

     

  • 運転制限を課せられる理由に納得がいきやすくなる。
  •  

  • 見えない障害の可視化による理解がしやすくなる。
  •  

  • 可視化により回復の実感が持てる。
  •  

  • 自分の苦手な部分が理解しやすくなる。
  •  

  • 苦手な部分が実感できると「どう克服すればよいか?」に考えが進む。
  •  

  • 客観的な証拠が積み重なるので「やっていることは無駄ではない」と自分の心を救える。

 

贅沢だけれど「こうしてもらえたらありがたいなぁ」というもまとめてみるとこんな感じです。

 

     

  • 日々の作業療法をもとにテーマをオーダーメイドしている事を伝える。
  •  

  • 自分で作った目標に到達するために必要なリハビリだと伝える。
  •  

  • 目標に対して今どのあたりにいるのかを伝える。
  •  

  • どうすれば目標にたどり着けるのか見通しを伝える。

 

「目標到達に向けて今どんな感じなの?」は知りたいなと思いました。

 

でも具体的に「どのくらいの時間が必要?」はあまり聞きたくないなぁとも思います。

 

どちらかというと「どうすればより効率的に目標に到達できるか」を聞きたいかな?

 

色々と事情があってできることできない事があると思います。もちろん当事者の性格や考え方によっても違うと思います。

 

「目標到達までに1年必要」と言われて喜ぶ人、落ち込む人とで別れると思います。そのあたりの判断は難しいですよね。

 

時間的な話は当事者に悟ってもらうのが良いのかもしれませんね。

 

というわえけで今回は千葉リハで受けた二つのリハビリを振り返ってみました。

 

空しくなるようなリハビリメニューでもプロによって考えられたゴールに続く道。

信頼する!全力を尽くす!手を抜かない!諦めない!

 

千葉リハでのリハビリを終えて感じている率直な感想です。だいぶヨイショしている記事になってしまいましたが、これが私にとっての事実です。当然、人によって事実は異なります。