家族が高次脳機能障害になったらどう接すればいい?当事者として振り返ってみた

「高次脳機能障害情報支援センター」で当事者との接し方のQ&Aが紹介されていました。

 

ここです

高次脳機能障害情報・支援センター:よくあるご質問

 

ここに掲載されている質問が、集約された当事者家族の疑問なのだと思います。どれも合点がいきます。

 

でもふと思いました。「もし自分のケースだったらどんな回答になるんだろう?」

 

そこで当事者が考える、【高次脳機能障害当事者との接し方。自分番Q&A】をまとめてみました。

 

ただの自己満足ですが、自分の置かれた環境を振り返るに良いきっかけになるのかな?なんて思いました。

 

当事者が高次脳機能障害を介護する側の困りごとに答えてみる!

質問:以前と人が変わってしまったようですが、どうしたらよいですか?

 

この質問が出るのよくわかります!私も退院後に人が変わったようになりました。

 

退院するまではとても穏やかな性格でした。家の中で怒鳴るようなことはありませんでした。モノを叩いたり壊したりするようなこともなし。

 

それが退院後は、子供を大声で怒鳴りつけるしモノにもあたる。間違ったことが1mmも許せない性格に変わっていました。

 

子供が学校帰りに友達にからかわれて帰ってきた日にゃ…その家に怒鳴り込もうとしました。「やめて!」と家族に止められるような状況です。

 

そして後になってから思うのです。「なぜこんなに切れやすくなったのだろう?」「怒りを抑える方法はないのだろうか?」と。

 

問題を明確にしなければ解決のしようがありません。だから、自分自身が怒りやすくなった理由を考えてみました。すると二つの怒りの原因に事に気が付きました。

 

心に余裕がなくて怒りやすくなっていた

怒りの沸点が低かったころの私は、毎日余裕がありませんでした。自分自身の問題を解決するだけで精一杯。

 

記憶障害のためにスグに忘れてしまう現実。でも忘れやすくなったというレッテルは何としてもはがしたい。人にバカにされたくない。そのような意識に強く支配されていました。

 

例えれば、細い糸がピンと張りつめたような状態です。心に余裕なし。

 

だから問題なんて起きてほしくない。すべてスムーズに行ってほしい。自分以外の問題を解決する心の余裕なんて…。

 

ギリギリ精いっぱい張りつめた状態で、今日を、今この瞬間を何とかやり過ごしている。そんな状態。平穏に過ごそうとしているのを阻害する外部の刺激が許せません。

 

「なんで大変な時に限って、問題を持ってくるんだ!」
「こんな話は聞きたくなかった!」

 

このようにブチ切れです。怒りが爆発しまくり。怒りの沸点が異常なほど低くなっていました。

 

感情失禁!?すぐ怒る私

感情失禁というと「ささいなことで泣く」というイメージがあるかもしれませんが、「些細なことで怒りが爆発する」ケースもあると思います。何もかもが楽しくてゲラゲラ笑い続けるのも感情失禁なのかな?なんて思います。

 

どれも高次脳のバランスが崩れてしまって起こる現象だと思います。

 

私の場合は怒りと悲しみの感情失禁がありました。怒りの理由は「心の平穏を崩されるのが許せない」というのが強かったと思います。あとは「不正」ですかね。

 

悲しみの理由は「後悔」です。毎日の優雅のお散歩のときに、自分が置かれた環境を悔やんで悲しんでいました。

 

妻は良く「融通が利かなくなった」って指摘するようになりました。実感があります。

 

質問:前にできたことが出来なくなりいら立つことが多くなりました。どうすれば良いですか?

イライラには理由があります。私のイライラは「恐怖」からきていました。

 

だから恐怖の原因を探れば状況が改善するかも知れないなぁ。って思います。

 

物事が出来なくなることそのものよりも、それによる周囲からの反応ですね。私に恐怖を感じさせるのは。

 

自分一人の問題ですむのなら、出来ないことが増えても特に気にすることは無いかなぁ?

 

例えば、私は今お酒が飲めません。飲んではダメと先生に言われました。出来ないことが増えました。

 

でも全く気にしていません。イライラしません。元々お酒を飲まないため、飲めても飲めなくてもどうでもいいからです。

 

これがお酒好きな人だったらどうでしょう?

 

「お酒は禁止だよ」と言われたら…「人生の楽しみを失ってしまった」と絶望する人もいるかもしれませんね。飲めなくなってイライラもするでしょう。

 

ある日突然、好きなことを禁止される…どうでしょう?怖くないですか?怒りが湧きませんか?イライラしませんか?

 

恐怖はイライラの原動力。だとしたらパートナーは何におびえているのでしょうか?高次脳になって失いかけているものは?失ってしまったものは何?

 

原因を見つけだせたら、代替案やフォローの算段が付きます。出来なくなったことが出来るようになれば、「まだやれるんだ」という自信が湧くと思います。自信はイライラを解消する特効薬になると思います。

 

質問:暴れたり怒ったりしたとき、どうすれば良いですか?

当事者より自分を守ったほうがいいと思います。静かにその場を離れる。刺激しない。挑発しない。そして何が原因で起こっているのかを見極める。わからないのなら無理に近づかない。

 

恐怖心からパニックを起こしているのかもしれません。ピンポイントで原因を理解して手を打たないと火に油になると思います。

 

私はモノにあたりました。仕事が出来なくなった自分が悔しくて悔しくて八つ当たりです。

 

仕事ができないと生活ができません。だから恐怖に襲われたのです。このころの妻は専業主婦。私が稼がないと一家飢え死にです。

 

それなのに、

 

「障害だからしかたがないよ。」
「今は無理に仕事をしなくても良いよ。」

 

このような声掛けをされても私の心に全く届きません。

 

「働かないと食えないだろ!」

 

という恐怖心を鎮める説得材料が提示されていないからです。火に油状態でした。

 

その後妻も働きに出るようになりました。高次脳機能障害の具合も金次第なのかなぁ?…なんて感じています。

 

質問:忘れっぽくなったようです。家族はどう接すればよいですか?

忘れぽくなったことを指摘しないでください。馬鹿にしないでください。まずはここから。

 

好きで記憶障害になったのではありません。

 

ケガで松葉杖を使っている人に向けて「おまえは走れないのか。のろまだな。」なんて言いませんよね?

 

でも記憶障害相手だと「忘れぽくなった」って平気で言うんですよね。(私の個人的な経験ですけど)

 

すっごい屈辱です。事実なんですけどね。人から指摘されるのってめたくそに悔しいですよ。健常者だったころの自分を知っているだけに。

 

「指摘しないと気づかないだろ!」

 

って考える人もいるかもしれません。でも他者からの障害の指摘って意味がないと思います。自尊心を気付付けるだけです。心が離れていきます。私はそう感じています。

 

【高次脳機能障害の症状に自分の力で気がつく】

 

家族はここを目指す!症状に気付くための手伝いをする。

 

目標は自分自身で気が付くこと。それが高次脳機能障害の克服なのかな?と思います。

 

「なら、自分自身で気づくために、家族はどうすりゃいいの?」

 

私への特効薬は「チャレンジ」でした。当事者に回復しようとする意志があるのなら、何かしら行動をとろうとするはずです。

 

そこを「危ないから!」と無理に制限しない。失敗すると財産や命に係わるとなるとまずいですが、そうではないのなら、どんどん挑戦させた方がいいと思います。

 

私のイオンへのお使いも高次脳機能障害克服への挑戦でした。迷子になるかもしれないと小学生の子供に手を引かれてイオンにお使いに行きました。牛乳1本を買うために。

 

…最初の頃はお使いができませんでした。失敗しました。牛乳を買ってきてと言われて卵を買ってくる有様でした。

 

それでも毎日お使いに行きました。同じミスを繰り返さないように次のルールを考えながら。

 

  • 必ず買い物メモを取る
  • メモをどこにしまったのか何度も確認する。
  • メモをしまう場所を同じポケットにする。
  • 現地でメモを見失ったら必ず電話で確認する。

 

失敗を経験する。失敗の対策を考える。対策を実行する。

 

健常者にとってはお使いも、ミスをしないための対策も簡単なものでしょう。子供でも出来ますね。でも出来ないんですよね。なぜならそれが障害だから。

 

でも何度もミスを繰り返しながら続けた結果、買い物でのミスはゼロになりました。これぞ障害の克服だと思います。

 

質問:訓練中はメモを取っていたのに、在宅になったらメモを取らなくなりました。どうすればいい?

私はメモ魔です。救急搬送された当日から体験していることをメモに記録してきました。脳が腫れていたためメモにすらなっていませんが、命懸けで記録していました。

 

入院時はもちろん、通いのリハビリや心理検査の時もメモを取りまくりです。メモを取りすぎて、どれが必要なメモかが分からなくなりました。それほどです。

 

なぜそうまでしてメモを取ったのか?理由があります。

 

この高次脳機能障害ブログを書くためです。救急車で搬送されているときに思い立ちました。「自分の体験をブログにしてやろう!」と。

 

ブログにする目的が無かったら、メモ魔にはならなかったと思います。

 

性格もあるでしょうけど、目的があるからメモを取り続けてこられた。そんな感じですね。

 

そこから考えると、在宅になったらメモを取らなくなった理由は、メモを取ることに意義を感じていないからなのかなぁ?なんて思いました。

 

そもそもメモが無くても困らなければ取りませんしね。

 

メモを取らないと不便になる状況になれば、再びメモを取り始めるのかもしれません。

 

質問:退院後自宅でゴロゴロばかり。外に出たがらない。何もしたがらない。どう接すればいい?

私は退院直後は1か月間、何もしませんでした。「あえて何もしない」と心に決めて何もしませんでした。同じような計画を立てているのかもしれません。慌てて動いて失敗したら…心がくじけます。

 

逆に本当に何もする気がないのかもしれません。

 

易疲労で疲れやすいのかもしれません。易疲労があると本当にしんどいです。頑張るほどパフォーマンスが落ちますしね。易疲労って本当に厄介。

 

易疲労は復帰への努力を禁止する見えない鎖ですね。

 

人によってはゴロゴロし続ける理由があるのではないかなぁと思います。

 

私とは全く逆のタイプなので詳しくはわかりませんが、高次脳の影響で意欲が無くなるという症状もあったはずです。

 

質問:集中して作業するのが困難なようです。どう対応すればいい?

これは散々経験して地獄を見たので良くわかります。

 

高次脳機能障害になると、集中すべき部分と放置すべき部分への注意の分配がうまくできなくなるんですよね。

 

私は注意障害が記憶力にとんでもない悪さをします。そのため薄いガラスでできた床をソロリソロリと歩くような感覚で仕事をしていました。全神経を全方位に張り巡らせた状態になっていました。常に不安定な状況です。

 

     

  • 仕事をしているときに物音ひとつで集中が途切れてしまう。
  •  

  • 些細なことで数時間かけて積み上げた記憶が消えてしまう。
  •  

  • 1日かけて行ってきた仕事をまた最初からやり直し。
  •  

  • やり直しは疲れる。だからどんどん記憶障害が酷くなる。
  •  

  • 頑張るほどに状況は悪化。
  •  

  • でも抑制が効かないから止められない。
  •  

  • 最後に怒り狂って発狂状態。

 

こんな地獄のような経験を何度もしました。

 

こんな地獄の状況の中で助かったなぁって思った対策コレです。

     

  • 時間を決める。
  •  

  • 時間が来たら絶対に止める。
  •  

  • たとえ途中でも止める。
  •  

  • 今やめると1日分の仕事が無駄になろうとも止める。
  •  

  • とにかく止めろ!
  •  

  • 止めろって言ってるだろこの野郎!!

だんだんヒートアップしていますが。このくらいの信念と覚悟をもって作業を止めるのです。それも自分自身で。人から止めろと言われてもやめられませんから。

 

大学病院の主治医からのアドバイスはこれなんでしょうね。「頑張らないように頑張れ!」です。(「努力しないよいうに努力せよ」だったかな?)

 

そして環境調整。【物音ひとつしない環境と、途中で仕事を止められる環境を整える!】これですね。

 

仕事はあらかじめ時間を決める。1分といえども妥協しない。そしてそれを実現する環境を作る。音は大敵です。とにかく集中できる環境!!声をかけない。お茶などは事前に用意しておく。

 

ほんの一言で頭の中の記憶が全部吹っ飛びます。要注意です!

 

私がモロにこれでしたが、対応がとても難しかったと思います。注意障害と記憶障害で崩れやすいうえに、感情失禁で怒りはじめますから。私も家族も修羅場できつかったです。

 

高次脳機能障害の症状は回復するの?

わかりません。個人差がありすぎます。

 

私の場合は回復を実感しています。回復の第一歩は「散歩」でした。

 

注意力、記憶力などの高次脳機能を支えるのは肉体です。

 

疲れやすいと、とにかく高次脳機能がうまく働けません。易疲労は大敵です。

 

易疲労があると仕事は難しいと思います。だから散歩!とにかく散歩です!歩こう!!

 

遠回りに感じるかもしれないけど、高次脳機能障害になりたてのうちは確実に体力をつけたいです。

そして「目標」を立てて、目標に向けて進みました。

 

私の目標は「運転再開」です。

 

おかげさまで運転再開は果たしました。

 

次の目標は「以前のように仲間と一緒に働く」です。

 

もう一つあります。

 

「この高次の機能障害のブログを世に広める」です。

 

頑張り続けます。